行かなきゃ、健康診断![2024年版]
9月分の給与明細を見て、『あれ、先月よりも社会保険料増えた!?』と感じた方もいるのではないでしょうか。
会社員が加入する健康保険や厚生年金などの社会保険料は、原則として毎年決まった時期に改定されるため、社会保険料は常に同じ金額とは限りません。
今回は社会保険料が変わるタイミングや理由について解説していきたいと思います!
社会保険料が決まる仕組み
社会保険料は4~6月支給の給与で決まる
社会保険料を算出する基準となるのが、4~6月支給の3か月分の給与です。
この給与は、基本給や残業代、通勤手当などの各種手当を含んでおり、これを「報酬」としています。
上記3ヶ月分の「報酬」の平均額により、「標準報酬月額」が決定します。
(例)
この「標準報酬月額」に保険料率を掛けたものが1か月分として支払う社会保険料となります!
つまり、この標準報酬月額の増減によって、社会保険料が増えたり減ったりするわけです!
こうして算定された社会保険料は、9月から翌年の8月まで原則として1年間継続して摘要されます。(賞与の場合を除く)
社会保険料が変わるタイミングと理由
社会保険料が変わるタイミングは9月(定時決定)
社会保険料のもととなる標準報酬月額は、はじめは入社したときの給与をもとに決まりますが、その後、給与に増減があった場合はそれに応じて見直す必要がでてきます。
前述したとおり、社会保険料は毎年4~6月支給の報酬の平均額をもとに算出し、9月から翌年の8月まで同額を毎月支払うことになります。
これを「定時決定」といいます。
この定時決定により、実際に支払われた給与と標準報酬月額に大きな差が生まれないように1年に1回見直す機会が設けられている、というわけですね!
また、4月に定期昇給が実施される企業が多いため、定時決定によりその年の9月分から変わるのが一般的です。
社会保険料がいきなり増えた!よくあるケース
いきなり社会保険料が増えると驚きますよね…計算間違いじゃないのか?と疑う人も少なくないはず。
そこで、ここでは社会保険料が増えるきっかけとなる理由のよくあるケースについて紹介していきます!
4~6月の残業が多かった
前述したとおり、算定のもととなる報酬には残業代が含まれます。
たとえば、年度末・年度初めから忙しい日が続き、4~6月支給の給与が残業や深夜勤務、休日出勤などで明らかに増えてしまった…という場合は、標準報酬月額が上がる可能性があります。
4~6月の算定期間以降は急激に残業が減ってしまい、9月からの社会保険料の負担増が辛い…なんてケースもあるかもしれません。
💡ただし、年間平均での算定が認められる場合もあります
日本年金機構:保険者算定(年間平均)が認められる要件等
業務の性質上、例年4~6月に残業などで臨時昇給が発生することが見込まれるなど、4~6月の報酬の平均で標準報酬月額を算定することが著しく不当であると認められる場合は、年間報酬の平均で算定することができます。
昇給により基本給が増えた
4月に定期昇給が実施される企業が一般的に多いため、ちょうど定時決定の算定期間と重なるので、昇給により標準報酬月額が上がる可能性があります。
通勤手当などの各種手当が増えた
通勤手当・家族手当・住宅手当・役職手当・資格手当…など、各種手当も報酬に含まれるため、増えた場合は標準報酬月額が上がる可能性があります。
たとえば、結婚をして郊外に引っ越したとすると、家族手当、住宅手当に加えて通勤手当も増えることで、社会保険料への影響も大きいでしょう。
昇給に加えて、昇進により役職手当がついた場合も同様です。
以上、昇給等により社会保険料が上がるケースをご紹介しましたが、手当が増えたり、昇給したとしても、同じ標準報酬月額の等級内であれば保険料の負担は増えることはなく、むしろ保険料は変わらず手取り額が増えてラッキー!というケースもあります!
社会保険料が途中で変わるケース
社会保険料は、上記の定時決定を待たず、途中で見直されるケースもあります。
さっそくみていきましょう!
随時決定
前述したとおり、社会保険料は1年に1回見直しが行われますが、昇給や減給により報酬に大幅な変動があり、実際の報酬と標準報酬月額に大きな差が生じたときは、9月の定時決定を待たずに保険料の見直しを行います。
これを「随時決定」といいます。
この場合も、標準報酬は定時決定と同様に継続した3ヶ月分の平均額をもとに算定します。
随時決定は下記の3つの条件をすべて満たした場合に行われます。
- 基本給や通勤・役職手当などの固定的(毎月変わることのない)報酬に変動があった場合
- 報酬月額が変動した3か月間、支払基礎日数が17日以上であるとき
- 報酬月額が変動した3か月間の平均から導きだした標準報酬月額が、現在と比べ2等級以降の差が生じたとき
給与の増減や、時給制から月給制になるなど給与形態が変わったときや、所定労働時間の増減などの雇用形態が変わったとき、各種手当の変更があったときなど…社会保険料が変わる可能性がありますね!
入社時(資格取得時決定)
入社したばかりの人は今後受け取るであろう報酬月額をもとに標準報酬月額を決定します。
💡今後受け取るであろう報酬月額とは
協会けんぽ:標準報酬月額の決め方
👉月給・週給など一定の期間によって定められている場合…その報酬を月額に換算した額
👉日給・時間給・出来高給・請負給などの報酬の場合…その事業所で前月に同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬の平均月額
産前産後休業・育児休業等終了時
産休や育休を終了後、短時間勤務などにより休業前に比べて報酬が低下する場合、社員の申出により標準報酬月額を見直すことができます。
この場合は、復帰後3ヶ月間の給与の平均額をもとに標準報酬月額を決定し、その結果休業前よりも1等級以上差が生じた場合に社会保険料の金額が変わります。
💡産休・育休期間中は社会保険料が免除に!
日本年金機構:産前産後休業・育児休業期間中の保険料免除
産休・育休期間中は、育児・介護休業法によって社会保険料の免除を受けることができます!
さらに、働いていなくても社会保険には加入している状態なので、免除期間中であったとしても、厚生年金保険料を納めた期間として老後に受給する年金額に反映されます!
これは次世代育成支援をするための制度といえますね!
保険料が増えることによるメリット・デメリット
《メリット》
- 将来受け取れる厚生年金額が増える
- 病気や出産時の手当金額が増える
社会保険に加入することで受給できる年金や各種手当金(傷病手当金・出産手当金)の額は、標準報酬月額や保険料の納付額によって決定します。
社会保険料の増額は月々の負担が増えてしまう…と損をしているように感じるかもしれませんが、納めた金額が多いほど、将来受け取れる年金や受給できる各種手当金が増える仕組みになっています。
《デメリット》
- 月々の保険料の負担が増える
- 高額医療費の自己負担額が増える
たとえ基本給や手当が増えてもその分保険料が上がれば月々の手取り額が減ってしまいます。
また、高額医療費の自己負担額の算定にも標準報酬月額によって決定するため、標準報酬月額が多くなると自己負担額も増える仕組みになっています。
💡高額医療費制度とは?
協会けんぽ:高額な医療費を支払ったとき
高額医療費制度は、同一月の医療費の自己負担額が高額になった際に、 限度額を超えた分については支払わなくてよい、または超えた分の払い戻しを受けられる制度です。
自己負担の限度額は標準報酬月額と年齢によって決まるため、標準報酬月額が上がれば自己負担額も上がります。
まとめ
- 社会保険料は標準報酬月額をもとに決められている。
- 標準報酬月額は決まった時期に見直されており(定時決定)、9月分の給与から新しい社会保険料が反映される。
- 社会保険料が急に増える理由は、標準報酬月額が上がるため。
- 給与に大きな変動があったときは定時決定を待たずに社会保険料が変わる場合もある。
今回は社会保険料が変わるタイミングや理由をご紹介しました。
標準報酬月額が上がると、毎月の負担額が増えるといったマイナスの面ばかりに注目しがちですが、長期的に見てみることで、皆さんの生活にプラスになる面もありましたね!
昇給や手当が増えた場合、反対に時短勤務や休業などで給与が減った場合など、
給与に大きな変動があったときは社会保険料が変わる場合があることを理解しておきましょう。
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